本書は、ドイツの教育学者であり、ベルリン自由大学及びハンブルク大学の学長を歴任したディーター・レンツェン氏が、ベルリン自由大学在籍中の1991年に公刊した著作、Krankheit als Erfindung. Medizinische Eingriffe in die Kulturの邦訳である。レンツェン氏はこれまでに実に多くの著作・論文を発表してきているが、この著作は、ドイツ教育学にいわゆるポスト・モダニズムの観点が積極的に導入された1980年代後半から90年代初めに執筆された神話学三部作の一つとして特徴づけることができる。すでに1985年には成人文化全般の子ども化の傾向を明らかにした『子ども期の神話学』が出版されている。本書の出版と同じ1991年には父親をめぐる神話的言説の歴史を明らかにした『父親(の神話学』が出版されている。これに本書を加えた三つの著作は、いずれも子ども期、青年期、成人期といった人生諸段階間の移行にかかわる神話的言説の歴史的変化を分析することで、個々の人生段階の意味と機能の変化を解明しようと試みるものである。本書では、上述の他の二つの著作の成果をも組み込みつつ、誕生から死に至る人間のライフサイクル全体における人生諸段階の狭間に位置する通過段階(移行期)に新種の医療諸分野を対応させ、個々の通過段階において医師たちが果たしているさまざまな文化的機能が解明される。その意味で、本書は、子ども期の神話学、父親の神話学とならぶ「病気の神話学」の試みとして特徴づけることができるだろう。
病気の神話学ー近代医療批判を超えてー
¥1,500
本書は、ドイツの教育学者であり、ベルリン自由大学及びハンブルク大学の学長を歴任したディーター・レンツェン氏が、ベルリン自由大学在籍中の1991年に公刊した著作、Krankheit als Erfindung. Medizinische Eingriffe in die Kulturの邦訳である。レンツェン氏はこれまでに実に多くの著作・論文を発表してきているが、この著作は、ドイツ教育学にいわゆるポスト・モダニズムの観点が積極的に導入された1980年代後半から90年代初めに執筆された神話学三部作の一つとして特徴づけることができる。すでに1985年には成人文化全般の子ども化の傾向を明らかにした『子ども期の神話学』が出版されている。本書の出版と同じ1991年には父親をめぐる神話的言説の歴史を明らかにした『父親(の神話学』が出版されている。これに本書を加えた三つの著作は、いずれも子ども期、青年期、成人期といった人生諸段階間の移行にかかわる神話的言説の歴史的変化を分析することで、個々の人生段階の意味と機能の変化を解明しようと試みるものである。本書では、上述の他の二つの著作の成果をも組み込みつつ、誕生から死に至る人間のライフサイクル全体における人生諸段階の狭間に位置する通過段階(移行期)に新種の医療諸分野を対応させ、個々の通過段階において医師たちが果たしているさまざまな文化的機能が解明される。その意味で、本書は、子ども期の神話学、父親の神話学とならぶ「病気の神話学」の試みとして特徴づけることができるだろう。